ロバート・ヘリヤ先生の
『Green with Milk and Sugar: When Japan Filled America’s Tea Cups』
を読んでいます。タイトルも魅力的!
緑茶とミルクとシュガーが、アメリカのティーカップに満ちていた時代のお話。
紹介文に、「忘れられてしまったアメリカ人の緑茶好きだった歴史」という内容があります。
日本人も、日本茶を最も飲んでいたのはアメリカ人だった時代、知らないという方もあるのではないでしょうか?
そして、「今日のアメリカは紅茶の大消費国で、日本は緑茶の国である。」と紹介文。
序章でヘリヤ先生は、
現代、紅茶を好むアメリカ人はかっては緑色に着色されたお茶が好きだった。
日本人は今、緑色のお茶が好きだが、かっては茶色のお茶を飲んでいた。
この逆転現象はどのような経緯で起きたのでしょうか?
そんなことを明らかにしますと始めています。
ボストンティーパーティー(ボストン茶会事件)で、アメリカ人は「お茶は飲まない!」と宣言し、コーヒー党になった。それから、Tea(紅茶)を飲むようになったのは、リプトンなど地道な広告宣伝によって感化されていくから、、、という説が一般的ですが、実は、それ以前に、すでにアメリカ人はお茶好きだったのです。
19世紀は、中国茶(緑茶も紅茶も)、
そして日本との貿易が幕末に始まると、、、
「日本茶によりアメリカの緑茶が民主化された。」
すなわち、全ての階級のアメリカ人が毎日の飲料として飲むようになったーーという言い方がとても面白いですよね。(直訳の方が面白いのでそのまま)
「日本趣味」として特別な人々が飲むということではなく、です。
しかし、1920年代ころから、アメリカは、経済的理由と人種的偏見もあり、インド・セイロン紅茶を選択するようになっていった。
岡倉天心は『茶の本』で、teaismという造語を示しました。これはたぶん、「茶道」にあてた言葉と思われます。
そして、ヘリヤ先生は「teaway」という造語を使って、アメリカ独自の喫茶文化を語ろうというのです。(日本好きのヘリヤ先生らしい)
アメリカではコーヒーをよく飲みますが、「tea」の方が洗練され、知的なイメージがあるそうです。それは、アメリカがイギリスの植民地であった時代からの流れだと考えられています。
かなりダイジェストしてますが、序章を読むだけでも面白いです。
amazonで試し読みも可能ですので、ご興味ある方はぜひ。
第一章は、アメリカのteawayの基礎となった時代のお話。
日本の喫茶文化の基礎も詳しく述べられています。
まだ、日本茶が輸出される以前のお話ですが、この基礎があったからこそ、日本茶がアメリカ人に受け入れられたと分かります。
第二章は、南北戦争の時代。
リンカーンもお茶を飲んでいました^^。
日本はまだ幕末の混乱期。
そのところが、詳しくわかりますよ。
第三章のタイトルは、
MAKING JAPAN TEA
いかがですか?
Japanese Teaではく、なぜ「JAPAN TEA」ブランドなんでしょうか?
そこも気になりますよね?
かって、日本茶は「Japan Tea」と書かれた浮世絵師によるラベル(蘭字 以下参照)を茶箱に貼って、輸出されていました。
それは、アメリカ人茶商たちが広めてくれた、初の国の名前をお茶に付けたブランド名だったのです。それらの経緯も読めます。
4章では、アメリカ中西部が最も緑茶ファンが多かったということで、その詳細について。
5章は、アメリカ人の好みが紅茶へと変わっていく頃について、話が進みます。
まとめの段では、現代のことにも触れていますので、一冊読むと日本茶の歴史も学べる素晴らしい本。
こちらに書いているのはほんの一部ですので、全体はヘリヤ先生のご本でお読みください。
(あと、この本の謝辞に、Special Thanks と、私のお名前も書いてくださっていて、本当に感謝なのです。だからでなく、とても本当にすごい本ですよ)
𠮷野亜湖(茶道家、日本茶文化研究者)
ふじのくに茶の都ミュージアム客員研究員
静岡大学 非常勤講師
静岡県立大学 社会人フェロー