抹茶を愛する方へ Dearest All Matcha Lovers

宇治の茶園清水屋さんにて、本簀(ほんず)栽培の藁振り作業を見学させていただきました。

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宇治 上林記念館所蔵 江戸時代(文化五年)の茶園の藁振り作業の画

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2018年4月12日 スウェーデン人の日本茶伝道師ブレケル・オスカル氏作業の画

 

抹茶用の碾茶(てんちゃ:石臼で挽く前の葉の状態)の茶園です。

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碾茶の栽培は、摘み取りの一か月前に覆いをかけて栽培されます。まるで「箱入り娘」のような扱いですね。

 

現在、こちらの茶園では、コンクリートの柱が立ち、鉄柱が天井枠に使われていますが、昔は竹ですべて組んでいたそうです。

 

それでも、やはり、上に登れば、足元は細い鉄パイプの上しか歩けませんので、「綱渡り」のような状態での作業です。

 

そこで、竹の棒をバランスを取るときの支えとして活用されていました。

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この竹の棒、バランスを取るためだけでなく、先が割れていて、巻き損じた所や多めに巻いてしまった部分を調整するにも使います。

普段は立てて置くので、下から見ると、どこに人がいるかの目安にもなります。ただ、撒いているところは、藁が雪のように降ってくるので、下から見ればすぐわかるのですが。

*オスカルさんのFB記事(動画)参照

www.facebook.com



この落ちてきたものは「シビ」(藁の葉の部分)と呼ばれ、茶の樹におちたシビを取ることを「シビ取り」と言い、藁を撒いたあとに、シビ取りの作業も行われます。

取ったシビは、畝の間に巻いておきます。(この後、番茶の葉が刈られる場合も上の藁が畝間に敷き詰められてからの摘採になるそうです)

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(シビがたくさん落ちてます)

 

最初に、藁を保管している小屋に行くと、ぷう~んとあの若畳の香りが漂ってきました。

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藁小屋に案内された後、清水さんから上で行う作業のレクチャーがありました。

①束になった藁を首からかけた専用のカッターで切り外します。すると、さらに偶数の束になっているため、一束ずつ外してばらばらにします。(偶数なのは、足場を一回固めて前方に撒いてから、後ろを向き、逆方向にも撒くためです。)

 

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①             ②

 

それから両手で持ち分け、振るようにしてバラし(この時、自然に足元には撒かれる)、遠くに飛ばすような気持で、振りながら撒いていきます。

 

清水さんの振り方は、シャンシャン、シャンシャン、と藁が鳴き、二拍子のリズムでした。

 

均等に撒かないと、茶に光が当たるところと当たらない部分での差が出てしまうため、出来るだけコツとして、遠くに撒くことで、自然に足元の方は落ちていくということでした。初心者はどちらかというと、足元に固まってしまうそうです。

慣れないと、練習初回は確かに言われた通り、足元に固まります。

 

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師匠の手本は、遠くまでかつ、左右均等です。

しかし、練習三回目くらいでコツをつかまれたオスカルさんは、師匠にお墨付きをいただき、すぐに本番となりました。

 

覆いは、このような伝統的な本簀(藁を掛ける)のは稀になり、黒い寒冷紗を用いる方が多くなりましたが、やはり、藁の方が中が涼しく、湿気があるなど環境の違いがあるそうです。

そのためか、本簀茶園の茶は、香りが深く豊かだと言われていました。

 

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被覆栽培(覆下栽培)

日光を遮ることで、葉が光を取り入れようと広く開き、葉緑素を多く作るので緑が濃くなり、味もふくよかかつ、やわらかになる(苦渋味が抑えられ、うま味が豊かになる)そうです。

 

そして、「かぶせ香」という海苔のような独特の香りがつきます。抹茶を飲むとき、茶碗から立ち上る「かぶせ香」に意識を向けてみたら、茶園で覆いを掛けて育てられている光景と重なりそうですね。

 

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よく「一芯二葉」を摘み取る、と言いますが、碾茶の場合は、「八葉」くらいまで摘むそうです。

 

こちらで栽培されていた品種は、「あさひ」と「さみどり」でした。

「あさひ」はしごき摘み
「さみどり」は折り摘み
と分けているそうです。

摘採の時にまた見学に行かせていただけたら有り難いと思っております。

叶ったら、またご報告申し上げます。

抹茶そして日本茶を愛する皆様へ


(最後に)清水さん、オスカルさん、ありがとうございました。

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吉野亜湖(茶道家
静岡産業大学情報学部非常勤講師

日本茶インストラクター