ティーバッグはいつから?
そして日本茶のティーバッグは初期のころからあったのか?
ユーカースの『ALL ABOUT TEA』(1935年)を中心に調べてみたいと思います。
wikipedia(2023.11.23閲覧)には、
ティーバッグは1908年にコーヒー貿易商であるトーマス・サリヴァンによって偶然に発明されたというのが定説となっている。 商品サンプルの紅茶の葉を絹(木綿とも)の袋に詰めて小売業者に送ったところ、そういう商品だと勘違いされて、その袋のままお湯につけて紅茶を煮出してしまったのである。 それがティーバッグの始まり。
とあります。
茶商が意識し始めたのはこのころかもしれません。
*ただ、このエピソードは『ALL ABOUT TEA』には書いてないので、もう少し調べてみましょう。
特許としては、1901年に「茶葉ホルダー(TEA LEAF HOLDER)」として、アメリカで特許申請されていることは有名です。(下図)
しかし、アイデアだけで、実際に流通していたか、一般に普及していたか、というのはわかりません。
*アイデアだけでしたら、江戸時代いやそれ以前から、日本では「茶袋」(『ALL ABOUT TEA』のDICTIONARYには「tea bag」と英訳されています。)がありましたよね。茶袋に茶葉をつめ、茶釜で煮出していましたので。
では、「ティーバッグ」自体が一般に認識されはじめたのは、いつ頃頃からなのでしょうか? 北米の新聞を調べてみました。
すると、1901年には、ティーバッグの淹れ方が説明されていたり、若いお嬢さんに最適というような記事が出てきました。「お茶の淹れ方」という特集の記事で、広告ではありません。
現代の感覚では、ティーバッグというと安価なものというイメージがあったのですが、コットンガーゼの袋に1カップずつ茶葉が詰められていることを考えると、コストも増えるし、手間も入るので、決して当初は安いものではなかたのでは?と疑問がわいてきます。
また、新聞はニューヨークやサンフランシスコ、カナダのモントリオールなど都会の新聞に見られました。ドレスアップした若い女性がモデルなので、先端の淹れ方だったのかなとも推測できます。
次回は、価格についても新聞記事や広告から追っていきたいと思います。
また、『ALL ABOUT TEA』は1935年の刊行ですから、1930年前後のティーバッグ事情に詳しいので、それについても次の稿でお書きします。
(実は、「tea bag」や「tea bag maker」の広告や記事は1900年以前にもあるのですが、もしかするとこれは単に「茶袋」パッケージの可能性もあるので、確実に私がティーバッグと確認できた記事からご紹介しています。→今後の更なる調査必要です。)
(つづく)
吉野亜湖
静岡大学非常勤講師
ふじのくに茶の都ミュージアム客員研究員