お茶の木に雄雌がある? 明治期の茶業書『製茶新説』から

増田充績編『製茶新説』(三省書屋)は、「実施経験」から書かれた茶の栽培製造者向けの実用書です。日本茶の輸出が盛んになってきた明治六年の出版です。

 

渋沢栄一が、あとがきを書いて推薦しています。

『製茶新説』渋沢栄一あとがき(国立国会図書館デジタルライブラリー)

 

この本では、茶の木の「」と「」を見分けることが重要だというアドバイスがあります。

 

え?お茶の木に雄雌があるのか?

そう思いますよね。

当時の茶畑は、種から茶の木を育てていました。

「茶木の雄雌を見分ける事」(五ウ)
を要約すると、

 

種を蒔き付けてから4か月くらい過ぎると芽が出てくる。

成長に随って雄雌の区別が分かるようになる。

雌の木は枝数が多く背も伸びやすく、雄の木の二倍ほど芽が収穫できる。

 

 

そのため、三年目くらいに見分けて、を中心にしていくと良いとあります。

 

現在のように品種という概念がないので、「雄」「雌」と呼んで区分けしていたのですね。

 

『製茶新説』から茶の雌木と雄木の絵(国立国会図書館デジタルライブラリー)

 

オンライン日本茶勉強会で、この本をご紹介ましたが、雄雌は驚きが多かったので、メモしました。

 

この本は他にも、幕末から明治期の製茶法や茶種について学べることも多いので、別稿でまたご紹介します。

 

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吉野亜湖(茶道家

静岡大学非常勤講師

ふじのくに茶の都ミュージアム客員研究員