『ALL ABOUT TEA」の著者W.H.ユーカースが、大正13年に来日。
ユーカースが驚いたのは・・・
日本ではほぼすべての駅で、温かい緑茶のR・T・D=「ボトルティー」が買えることでした。
(そして私が驚いたのは)同様にインド・セイロン紅茶の浸出液も、茶色の土瓶にて販売されていたこと!値段は緑茶よりお高く、7.5セントと、倍以上です。(同書Ⅱp.431)
当時の緑茶用の汽車茶瓶は、ガラス製でした。
英語では「green bottle of tea」とユーカースは書いていますが、透明のものも多くみられますが緑色のものもありました。(個人蔵:北区飛鳥山博物館『ノスタルジア・駅弁掛け紙コレクション』64頁。)
そして、紅茶用は「little brown teapots of ready-brewed tea」と書いているので、茶色の土瓶であったのだと思われます。
・・・ということは?
茶色の汽車土瓶、見たことありますが、茶色は紅茶用だったのか?という疑問が出てきました。これについては要調査!
確かにサンドイッチには紅茶、合いますね。
この時、ユーカースは、『ALL ABOUT TEA』の執筆のため、全世界の茶産地へ取材旅行に出ていましたが、日本のように浸出液がボトルで購入できるスタイルは他になかったようです。
英国も素敵なのですが、「ティーバスケット」のように「ティーポット」に「リーフ」(茶葉)が入っていたり、「カップ」に注いだ形で出てきたりと、茶液をボトルに入れて販売という形ではありません。
ティーバスケットには、ミルクや砂糖、ケーキ、パンなどが付いているので、コンパートメントを予約したお客様向けのようです。
30セントとありますが、日本と異なり、容器は返却するので、カフェ同様、お茶とお菓子代ですね。
そして、英国の列車では「ダイニング・カー」や「プラットフォーム」でお茶が飲めたり、という場所はあるのですが、ボトルで携帯するタイプではないのです。
日本は、無糖の緑茶飲料(R・T・D)では先端を行っていると言われますが、すでにこの頃から「液体の茶」を販売していたという歴史があったことがわかります。
参考
汽車土瓶は1889年(明治22年)静岡駅で売り出されたのが始まりだそうです。
吉野亜湖「『ALL ABOUT TEA』から見る近代日本茶広告小史」(『海を渡った日本茶の広告』静岡茶共同研究会編)
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吉野亜湖
静岡大学非常勤講師
ふじのくに茶の都ミュージアム客員研究員